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グルタミン酸は哺乳類の中枢神経系において記憶・学習などの高次機能を調節する主要な興奮性神経伝
達物質として知られているが、興奮毒性という概念で表されるように、過剰なグルタミン酸は神経細胞毒性 を持つことが知られている。グルタミン酸の興奮毒性は、脳虚血、てんかん、アルツハイマー病、緑内障な どの神経疾患に関与するだけでなく、脳の正常な発達を障害し、自閉症、うつ病、不安障害などの精神疾 患の発症にも関与すると考えられている。細胞外グルタミン酸濃度を制御し、脳をグルタミン酸の興奮毒性 から守るのに主要な役割を果たすのはグルタミン酸輸送体である。このグルタミン酸輸送体の役割は、脳 内環境の恒常性維持という受動的な役割を超え、脳の正常な発達、脳の機能維持、脳の情報処理に必要 不可欠なものであることがわかった。本講義では、以下のようなグルタミン酸輸送体の働きを話す予定であ る。
1) 脳の情報処理におけるグルタミン酸輸送体の役割
2) 脳の機能維持におけるグルタミン酸輸送体の役割
3) 脳の正常な発達におけるグルタミン酸輸送体の役割
4) 緑内障や脳発達障害の発症におけるグルタミン酸輸送体の役割
グルタミン酸輸送体の機能を制御する薬物は、グルタミン酸受容体に作用する薬物に比べ副作用が少な
い。「グルタミン酸輸送体の機能調節」という新しい概念に基づく、緑内障、アルツハイマー病、うつ病、不安 障害などの難治性疾患の治療法の可能性についても言及したい。
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