八坂先生特別講演

演題:痛み情報伝達に関わる脊髄後角表層細胞のタイプ別特徴と神経回路
    -電気生理学、形態学、免疫細胞化学的方法を用いたアプローチ-

演者:八坂敏一先生(Spinal Cord Group, University of Glasgow, Glasgow, England)

日時:平成19年10月12日(金曜日) 午後5時半から6時半
場所:2424室
 
要旨
脊髄後角表層は痛み情報を伝える Ad 線維及び C 線維から入力を受けており、痛み情報伝達及びその修
飾に重要な役割を担っていると考えられている。ここでは一次感覚神経線維から情報を受け取り脳に伝える
(投射神経)と同時にその情報を修飾(介在神経)している。投射細胞は第1層及び3−4層に主に存在し、
第2層(膠様質)は全て介在神経細胞である。我々は、このほど膠様質介在神経細胞の分類とその興奮性
及び抑制性入力について調べた。以前の報告に従って細胞を形態により4種類(islet, central, radial,
vertical cell)に分類しその入力を調べた結果、全てのタイプで C 線維由来の興奮性入力が見られ、
radial cellとvertical cellでは Ad 線維からの興奮性入力も見られた。islet cell以外のタイプではAd 線
維及び C 線維由来の抑制性入力が見られたが、islet cellでは Ad 線維からの抑制性入力だけであっ
た。これらの結果から予想される神経回路について考察した。投射細胞について免疫染色を行い、その形
態学的及び細胞化学的な性質が明らかとなってきた。これらの細胞の多くはサブスタンスPレセプターのNK
-1陽性細胞であった。これらの細胞ではAMPA受容体サブタイプの分布にも特徴が見られた。AMPA受容
体サブタイプは組み合わせにより異なった電気生理学的特徴を示すことが知られている。染色の結果を機
能的に裏付けるため、これから電気生理学的な実験を計画しており、その方法についても紹介する。これら
の研究は生理学、形態学、免疫細胞化学的手法を組み合わせ、多面的にアプローチしており、それが大き
な特長である。Lee先生の講演内容は、海馬におけるニューロン-グリア相関に関する研究です。具体的に
は、アストロサイトに発現しているプロテアーゼ受容体の1つであるPAR1(トロンビン受容体ともいわれる)
の活性化により細胞内Ca2+濃度が増加し、その結果、アストロサイトからグルタミン酸が放出され、これが
近接するニューロンに存在するNMDA受容体(グルタミン酸受容体の一種)を活性化する、という内容です。

トップへ
トップへ
戻る
戻る